研究報告
8.32016
アンケート調査による「銀線細工」の認知度及びイメージ調査 ―秋田銀線細工に関する基礎的研究1(後半)―
目的
1 被調査者の属性
2 「銀線細工」の認知度と実見の有無
3 秋田県の「国指定伝統的工芸品」4品と「銀線細工」の認知度比較
4 「銀線細工」を知る契機と見かけた場所
5 「銀線細工」のイメージ分析 (自由記述)
6 「銀線細工」のイメージ分析 (イメージカテゴリーの数値化)
4 「銀線細工」を知る契機と見かけた場所
「銀線細工」という言葉を「知っている」と答えた回答者に「名称を知る契機」についてたずねたところ、テレビ28人(7.3%)、本・雑誌19人(4.9%)、店頭12人(3.1%)、旅行先7人(1.8%)、家族4人(1.0%)、授業・講義3人(0.8%)、友人・知人2人(0.5%)、インターネット2人(0.5%)となった(表5)。「知らない」と答えた回答者は308人(80.1%)だった。
また、銀線細工を見たことが「ある」と答えた回答者に、「銀線細工を見た場所(画像・映像を含む)」についてたずねたところ、テレビ59人(15.6%)、店頭47人(12.4%)、本・雑誌39人(10.3%)、旅行先25人(6.6%)、インターネット13人(3.4%)、授業・講義0人(0%)となり、どちらもテレビが最も多い結果となった(表6)。
5 「銀線細工」のイメージ分析 (自由記述)
今回のアンケートで回答が得られた10~70代の男女385人のうち、自由記入欄への記入があった回答者は300人だった。自由記述欄に記入があった回答の一例は以下の通りである。
(10代女性) 銀でできているので本当は違うだろうが、すぐ壊れてしまいそうなイメージがある。繊細で華やかなイメージ。
(10代女性) 繊細で洗練されている。製作するのが難しそう。(10代男性) ものすごく硬く尖っていてけがしそうだと思います。でもとてもきれいだなと思いました。(10代男性) 今まで聞いたことないけど、アンケートをして興味を持つようになった。
銀線細工で作られたアイテムが欲しい。(20代女性) 見たことはありましたが、これを銀線細工というのを初めて知りました。品のある素敵な細工ですね。
日本の文化に誇りを感じます。(20代女性) 細やかで女性的。(20代男性) 繊細。手が込んでいる。職人技。伝統。(30代女性) 写真を見て初めて銀線細工を知りました。
伯母から成人式に贈られたものがこれだったと初めて分かりました。(40代女性) 写真を見て芸術的な工芸のイメージを持ちました。素晴らしいと思います。(40代男性) 伝統技術。伝統工芸。日本に昔から受け継がれている技術。こわれやすい。とても細やか。(50代女性) 銀は錆びやすいのではないか?黒ずみそう。(60代女性) 華やかな場合の装飾品として良いと思います(品がある)。(60代男性) 繊細で優雅な感じがとても好きです。主人からのプレゼントで知ったことが、はじめての縁でした。
大切に使っています。(60代女性) コツコツと作り上げる手作業に感心する。(70代男性) 繊細な仕事(製作)で芸術的要素が大きいと思います。(70代男性)
6 「銀線細工」のイメージ分析 (イメージカテゴリーの数値化)
分析ソフト(テキストマイニング)を用いて、アンケートの自由記述部分のイメージカテゴリーを数値化し、特に数値の多かったものをグラフに示した(表7)。最多は「繊細」82個となり、次いで「きれい」78個、「高い」49個、「細かい」32個、「高級」27個、「壊れる」25個、「上品」15個、「技術」12個、「美しい」12個、「伝統」11個、「難しい」10個、「大人」10個、「職人技」10個、「女性」6個、「かたい」6個、「重い」6個、という結果となった。プラスイメージと捉えることのできる語句には「繊細、きれい、上品、美しい」等があり、対するマイナスイメージと捉えることのできる語句には「壊れる、重い」等があった。
「銀線細工」のマイナスイメージは「変色する」の数値が高くなると予測していたが、実際に「変色する」、「黒ずむ」、「錆びる」等、変色に関する回答者は4名にとどまった。
また、「先端が痛そう」、「角が痛そう」、「すごく硬く尖っていてけがしそうだと思う」、「ひっかけて指とか怪我しそう」等、葉モチーフや花モチーフの花びら部分の「尖った先端」に関する回答者が6名だった。「変色」に関する回答者は年配者(40~60代)が多かったのに対し、「尖った先端」による「怪我しそう」、「痛そう」と答えた回答者は全員が10代であった。
その他には、「技術」12個、「難しい」10個、「職人技」10個、「大変」4個、「手間」3個、「時間」3個、といった回答が見受けられ、機械によって短時間で量産されたものではなく、手間や職人の技術が必要である品であることは認知されていることがわかった。